もしも、教育制度と高齢者福祉制度が入れ替わったら?①
以前、全ての子どもに公教育を届けられるよう、学校以外のルートも作ってほしい!という記事を書きました。
educational-buffet.hatenablog.com
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今回は、高齢者福祉と教育を比較して、教育の現状を考えてみたいと思います。
福祉制度=当事者本位。教育制度は・・・?
例えば、高齢者福祉を見てみましょう。
ケアの受け方は大きく分けると
・施設で暮らす
・施設に通う
・自宅に訪問してもらう
ケアの内容や施設自体も複数あって、ケアマネジャーと相談の上で選択できます。
全員に適用できるたった一つのケアなど存在しない、という事をきちんと認識したうえで制度を整えています。
待機問題など解決するべき課題はあれど、理念としては「当事者本位」です。
では教育制度はどうでしょうか?
教育の受け方は一つだけ。「学校に通う事」
全員に適用できるたった一つの教育を、学校を通してのみ提供する。
学校に行かないと公教育を受けられない。
他の方法で学習をしても修了と認められず、進路の選択が極端に少なくなる。
そこに「当事者としての子どもの目線」は一切ありません。
制度設計している人は、「国家に寄与する国民を育てる」という戦前の価値観から抜け出せてないのでは、とさえ思ってしまいます。
教育は子どもの権利なのだから、福祉と同様に「当事者本位」が本来のスタートラインです。
福祉と教育。
二つの制度を入れ替えてみることで、教育制度の問題点がわかりやすく見えてくるかもしれない。
そこで今回はこんな企画です。
もしも、教育制度と高齢者福祉が入れ替わったら?
まずは、「毎日施設に通う」以外に選択肢の無い高齢者福祉の現場を見てみましょう。
ある日の高齢者福祉施設「はつらつ苑」。
8:00~8:15の登苑時間に合わせて、利用者さんたちが集まってきます。
8:30から朝の会が始まり、その後のスケジュールも分単位で組まれています。
体操や音楽など、多彩なアクティビティが自慢の施設です。
皆さん、にぎやかに和気あいあいと楽しい時間を過ごしています。
全員参加の福祉施設 楽しいばかりじゃない
しかし、中には問題を抱えている人もいるようです。
Aさんは仲良しグループから口を聞いてもらえなくなり、ここ数日暗い顔をしています。
Bさんは興味のない活動を、施設のペースでやり続けることが苦痛です。
Cさんは体調が悪く、本当は家で休んでいたいと思っています。
「ここには、いたくない」
しかし、それは我が儘というものです。
介護が必要で、ここに来ないと受けられないのに、「ここにいたくない」なんて。
そう思った3人は、それぞれずっと我慢していました。
うまく施設でやっていけない自分を「ダメな人間だ」と思っていました。
けれど我慢し続けたある日、3人は施設に行けなくなってしまいました。
施設に戻れるように、一丸となってがんばろう!
不登苑になってしまうと、家族はうろたえました。
「施設に行かなきゃダメじゃない!
検査でも異常がなかったんだから、施設を欠席なんてできないんだよ」
息子が言いました。
「施設に行かなかったら、ポイントが付かなくなって、2年後の更新ができなくなるんだよ!?将来どうするんだよ!」
娘が言いました。
「お兄ちゃんの世話の仕方が悪いから不登苑なんかになるのよ!みっともない」
孫が言いました。
「施設に行かないと、社会でやっていけなくなるよ?」
これらの言葉に「施設に行けないなんて、自分はダメな人間だ」と思っている3人は、ますます苦しみました。
介護は必要だけれど、どうしても施設には行けないのです。
施設のスタッフは相談にのってくれました。
「大変でしたね。早く戻って来れると良いですね。」
「カウンセラーと相談して、少しずつでも戻れるようにしていきましょう。」
「保健室でも良いので、来てみませんか?」
「ポイントの更新もありますので、戻れるように頑張っていきましょう」
施設のスタッフは、3人がどうすれば施設に戻れるか真剣に考えてくれました。
3人は施設に行くことが難しかったのですが、行く以外の選択肢は無いことも良くわかっていました。
Aさんは、無視をされても気にしないように・・・と自分を勇気づけて登苑しました。
Bさんは、家族の言葉に傷つき、誰にも会いたくない気持ちがますます増えてしまいました。
Cさんは、施設に行けない事や将来の事を考えると、ますます体調が悪くなってしまいました。
行かなければならない
そして・・・
Aさんはいじめを苦に自ら命を絶ってしまいました。
自治体の高齢者福祉課はいじめの存在を認めず、遺族が訴えを起こしました。
Bさんは部屋からいっさいでようとせず、引きこもりになってしまいました。
施設に行かずに引きこもるなんて、恥ずかしくて友だちや親せきに相談することができません。
Bさんも家族も苦しみの日々です。
Cさんは体調が回復せず、施設に行けませんでした。
今は施設に戻るための「適応支援施設」に通っています。
無認可の訪問介護を受けたかったのですが、費用が高くて利用できませんでした。
施設に通っていないことで、将来良い介護を受けられなくなることを心配しています。
多様な介護を、状況に合わせて選ぶことができれば・・・。
以上、「毎日施設に通う」以外に選択肢の無い高齢者福祉の現場 でした。
次回につづきます。
「もしも、教育制度と高齢者福祉制度が入れ替わったら?②」