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AI vs. 教科書が読めない子どもたち1 AI vs. 読める教科書を使えない子どもたち?

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今回は「本のご紹介&感想」を記事にしたいと思います。

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」2018/2/2 新井 紀子 (著)

本屋に平積みになっているので、読まれた方も多いと思います。評判が良かったので手に取ったこの本、私も夢中で読んで衝撃を受けました。

「だからか・・・」と思い当たる事が多かったからです。

 

 

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」では何が語られているのか


おおまかに要約すると

AIについて

  • AIは計算機であり、人間の知能を全て数式で表現しない限り、AIが人間にとって代わることはない。
  • シンギュラリティは来ない。AIが征服者になることはない。
  • それでも、人間の仕事の多くがAIに代用される。

 

☆AIに征服されないけど失業はする。

 

 

読解力について

  • 日本人の読解力を調査した。
  • 日本人の中高生の多くは、表層的な知識は豊富(詰め込み教育の成果)。
  • しかし日本人の中高生の多くは、教科書レベルの記述も正確に理解できてない。
  • これは日本人に限ったことではない。(国際的な読解力調査から見て)

 

☆人類全体として、実は文章を理解できていない人がけっこういる。

 

 

AIの時代の労働

  • 日本の労働力の特徴は、AIの特徴と似ている→情報処理は得意・理解が苦手
  • そのような労働力は、簡単にAIに代替されてしまう。
  • そこから推測する未来に、著者はかなり悲観的。かつてない世界恐慌がやってくる。
  • 求められる人材(能力)

高度な読解力と常識

コミュニケーション能力

理解力

人間らしい柔軟な判断

発想力

 

☆読解力のある人間を育てないと、世界恐慌になるかもよ。

 

 

AIの時代の教育

  • これまでの教育では、AIで代用できる人材を養成してしまう
  • (アンケート調査)読書量、学習習慣、得意科目と、読解力との相関関係は見られなかった。
  • アンケートを元に分析したが

そもそもアンケートの文章の理解もできていない、

自己理解さえもできていない、という可能性がある

 

 

ポイント

☆読解力を育てる有効な手段は発見されていない。

 

教科書を読み解ける力を


重要なのは、中学卒業までに教科書を読んで内容がはっきりとイメージできるような、リアリティのある子どもに育てること。

 

読解力不足を補うために 暗記、詰め込み教育が浸透した

 

読み終わって、「そんなに読解力が無い子どもの割合が高いのか」と衝撃でした。

だから暗記、詰め込みで受験を突破するという、日本のベーシックな教育が生まれたのか、と理解しました。

  • 戦後の高度成長期、大勢が良い大学→就職ルートを目指すようになった。
  • けれど、限られた読解力では受験を突破できない。
  • そこを補うために、暗記、詰め込みで乗り切らせるようになっていった。

 

という流れだったんじゃないでしょうか。

当時は「決められたことを間違いなくこなせる労働力」が欲しかったのだから、それでも全く問題なかった。

多くの人が、勉強嫌いになってしまったけれど。

 

 

質問の内容どころか、自己理解もできていない・・・かも?

 

「そもそもアンケートの文章の理解もできていない、

自己理解さえもできていない、という可能性がある」


なかなか衝撃的。もちろんこれは中高生に限りません。

だから説明しても伝わらず、議論できなかったのか、と思い当たることがいくつかあります。

 

 

 

人生さえも暗記で乗り切っている?


前提を疑って改善をしよう、という動きがあると、ひどく反感を覚える人。

閉じた組織が治外法権状態になっても、それを支持する人。

 

そういう人の発想がよくわからなかったんですが、「暗記で乗り切っているのかも?」と思ったら妙に納得しました。

 

暗記で乗り切っている人は、

「組織のルールと常識」をひたすら暗記して、理解や判断をせずに「暗記したものを当てはめる」ことで生きている。

 

「前提を疑おう」というのは、試験5分前に「鎌倉幕府は1192年成立じゃないらしい」と言われることに近いのかも。

そりゃパニックになる!

一度暗記したことを、変えられては困るんです。

 

 

そもそも「読む」とは文字だけを指すのか?

 

こどもの本棚から辞典を引っ張ってきました。


三省堂 例解小学国語辞典によると

「読む」

①文字や文章を見て、声に出して言う。

②文字や文章、図表などを見て、その意味をつかむ。

③おし量る。見ぬく。

④数える。

⑤先のなりゆきを見通す。

 

③や⑤のように、「おし量る・見ぬく」「先のなりゆきを見通す」というのも「読む」に含まれているようです。

 

「空気を読む」「先を読む」ように、「読む」という行為は決して文字・文章だけを対象にしている言葉ではなく、

「情報から意味を見出す行為」を指しているようです。

 

「読解力」というと、「文章を理解する力」と思いがちですが、もっと幅広い状況判断のことも含んで考えて良さそうです。 

 実際先ほど挙げた、著者が「求められる人材」として挙げている能力もそのような内容です。

 

高度な読解力と常識

コミュニケーション能力

理解力

人間らしい柔軟な判断

発想力

 

文字について

人類が全員「文字による読み」が得意なわけじゃない

読解力が文字の読み取りに限らない、という点は確認しましたが、やっぱり学習や仕事上の情報は文字ベースが基本です。

上記のアンケートも文章で問い、文章で回答という形だったようです。

 

中学生の読解力がサイコロ並み(2択なら50%)というのは、物事の理解力がないという人だけでなく、「読字」が苦手という人も相当数いるのでは?と思います。

音声なら理解できる、動画などの視覚情報なら理解できる、という人もいたのではないかな。

・理解が苦手

・理解できるが文字が苦手

 

文字が苦手なだけなら、多少のトレーニングは良いと思うけど、何が何でも文字情報に慣れさせるより、音声でも動画でも使って情報伝達をスムーズにした方が良いと思う。

 

文字読解にエネルギーを使うぐらいなら、理解する方のトレーニングに使った方が良いんじゃないか?

文字読解と暗記にエネルギー使うから、理解する力を育てられないんじゃないの?

 

書字障害の子を持つ親としては、切実にそう思いました。

 

 

紙の教科書で学び、紙に板書きし、紙でテストして得られる結果


以前の記事で、デイジー教科書について書きました。

読み書き障害のために、理解していることを認めてもらえず、自分の理解力にあった学校に進学できない子ども達。

そこでこう書いたことを思いだしました。

 

テストや課題をやらせる事で何を知りたいのでしょうか?

テストは「理解度」を測るために行われているはず。「文字を読む力」「紙に書く力」を知りたいわけではないだろうに。

 

「解く」力が求められていて、そこを鍛えたい。

それであれば、デイジー教科書でも活用すれば良いんじゃない?

 

 

「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」には、

P245 デジタル教科書のように政府の支援をうけて、導入が進んでいるものも少なくありません。

それにもかかわらず、今回お伝えしているような読解力の状況なのです。

  

とありますが、デジタル教科書を学校で使えるまでのハードルが恐ろしく高い・・・。

実際に使えるのは、学習障害の認定を受け、自治体・校長・担任の理解と協力があり、さらにクラスメイトの理解がある場合だけなんですよね。

しかも進級・進学してからも使える保証はありません。

 

「頑張ってみたけれどできなかった子に、仕方なく使用を認める」なんてハードル上げずに、紙でもデイジー教科書でも、拡大教科書でも、それぞれが自由に選んで自由に変更できればいい。

そうすれば「読字」のグレーゾーンの子たちも、「解く」ほうに力を注げるようになるようになるんじゃないかな。

 

 

文字による読解力テストで、理解力が測れているのか?

そもそもこのアンケート


テストが口述だったら?

視覚に訴えるデザインだったら?

普段から読字によらない学習環境で学べていたら?

同じ結果になったんだろうかと疑問にも思っています。

 

読解力を上げる必要がある。確かに。

文字の読字も、共通言語として必要なラインはある。

新井 紀子 さんのさまざまな取り組みを、応援したいと思います。

 

ただ、「読字」は情報を得るツールの一つでしかないはず。

そこで得た情報を脳内で再構築する、さらに他の情報とつなげて自分なりの「理解」を作る。

必要なのは「解く」の部分のはず。

「読解力」が苦手な子には、別のツールで学ぶことが必要なんじゃないかと思いました。

 

暗記で乗り切っている人たちが子どものころ、自分に合ったツールで学べていたら?

そのうえでトレーニングのステップまで進めていたら?

 

デイジー教科書勉強会に参加した後なので、よけいに強くそう思いました。

デイジー教科書勉強会1 行政主導でまずは予算を - Educational Buffet!

 

 

次回に続きます。

educational-buffet.hatenablog.com